
というやり方は巨大なお金がかかりますけれども、それは安全かもわかりません。あるいは、東宝がやっている「ラ・マンチャの男」は全くブロードウェー時代の「ラ・マンチャ−」の復元ですから、これは非常に「ラ・マンチャの男」のような作品にはぴったり合っていますね。「屋根の上のヴァイオリン弾き」もほぼそれに近いです。ところが、それ以外はやはり日本人の演出家にさせますので、日本人の演出家が作品と合ってくれるといいものができるんです。
私は「アンネの日記」は鵜山仁さんという方に演出をお願いしたんですが、台本を一読して、これはもう鵜山さんしかないだろうと。鵜山さんというのはストレートプレイの演出家としては一方の旗頭ですけれども、ミュージカルが果たしてお得意かどうかは、これまでの仕事の中では私としてはつかんでなかったんですけれども、「アンネの日記」という非常に演劇性の強い室内劇風なミュージカルだったものですから、これは鵜山さんだろうと。これは幸い私の目っこのつけ方は成功したと思います。ですから、スタッフを選ぶのも非常に冒険というのか、1つの賭けでございます。キャストも賭けなら、スタッフも賭けだと。
○前田
さっきの安寿ミラにしても、意表を突いた配役です。意表を突くということで、それだけお客さんにも発見させるということだし、あるいはプロデューサーとして言えば、安寿ミラさんという女優さんに対しても、新しい宝物を彼女が発見する場を、そういうチャンスをあげる。事実彼女はそういう発見をしたんだろうし。
僕はさっき、この人は悪い人だと言ったんですけれども、そういう意味ではいい人なんです。そういういいことをたくさんやっている人なんですね。
○山下
たまたま演出家の謝珠栄さんという人は、本人も宝塚のOGですし、宝塚のスターをうまく使う。今度も大地真央をうまく使って「エニシング・ゴーズ」の新しい演出をやった人ですけれども、そういう人なので、安寿ミラのお客が喜ぶ見せ方をよく心得ていたんですよ。
演劇というのは、歌舞伎が象徴していますけれども、1シーンだけすばらしいシーンがあったら、それをまたもう1度見たいなと思うんですね。これは映画でもそういうことがあるかもわかりません。例えば「第三の男」のラストのシーンが好きな人は、あれを見に何回も「第三の男」を見たというご経験があると思いますし、歌舞伎の道行なんていうのは、言ってみれば、そういう立役と女形が一番いいところを見せるのがあるわけですから。だから、そういうものをいかに演出家につくらせるか、あるいは書きおろしの演劇なら作
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